法律書評ブログ

読んだ法律関係の本について書評を書いていきます。

番外編:買ってよかった実務書2020

忙しさにかまけて本編すらまともに更新していませんでしたが、なんとか1年間を乗り切ることができましたので、個人的に役に立った本を備忘録的に挙げておきたいと思います。

 

特に1年目の、右も左も分からない先生が、何とか前を向くことができるようにという観点でピックアップしています。より具体的には、1年前の自分に教えてあげたい本がどれかというのを基準にピックアップしています(ある意味、1年前自分がどれだけ分かってなかったか告白してしまうことになってしまっています笑)。

 

私の取扱領域的に、いわゆる街弁的なものが多くなっていますので、ご承知おきください。

 

1.総論的なもの

中村直人・山田和彦「弁護士になった『その先』ののこと」(有斐閣、2020)

株式会社商事法務

企業からの圧倒的な支持を受けておられる先生方が、所内研修の内容を書籍化したものです。

ものすごく難しいことが書いてあるというわけではないのですが、これがきちんと実践できる人は確かに信頼されるだろうなと納得してしまう内容ばかりでした。

企業法務系法律事務所の方を対象としているような記載もありますが、それ以外の事務所の新人・若手にも十分勉強になるものですので、幅広い方に手に取っていただきたい本です。後は実践するだけなのですが、これがなかなか難しいです...笑

 

・京野哲也・林信行編著「Q&A 若手弁護士からの相談374問」(日本加除出版、2019)

Q&A 若手弁護士からの相談374問 | 日本加除出版

実務に出てみて、法的な論点のところでなく、手続き的なところでつまずくことが多いです。かといってこんなことを先輩に聞くのも...となることもあると思います。

この本は、あまり普通の本には書かれていない事項についても解説されていてとても便利です。一冊手元に置いておくと安心かなと思います。

 

 

2.交通事故

・髙中正彦ほか「交通賠償のチェックポイント」(成文堂、2019)

交通賠償のチェックポイント | 弘文堂

交通事故といえば、赤本・青本・別冊判タ38号(過失割合についての緑の本)の3点セットを手元に揃えていく必要があるというのはなんとなく聞いたことがあるかもしれません。ただ、上記3点セットは、いきなり手に取って開けてみても、何が書いてあるかすぐには分からず、通読には到底向いていません笑

この本は、交通事故で問題になり得る点がコンパクトにまとまっていて、1冊目に読むものとしては非常に良いです。

 

東京弁護士会 親和全期会 編著「こんなところでつまずかない! 交通事故事件の実務用語辞典」(第一法規、2018)

こんなところでつまずかない! 交通事故事件の実務用語辞典 / 第一法規ストア

交通事故を扱う中で、用語がとにかく分からないというのが悩みの種でした。私も弁特くらいが用語知識の限界で、アジャスター・レセプト・人傷等になるともう???状態でした。

この本は、交通事故の中で出てくる用語について、辞書的に調べることができるので、初めての人にとっては非常に有用です。

また、この本は、車のパーツについても、イラストとともに解説しており、これも役に立ちます。

なお、こんなところでつまずかないシリーズは、先輩方がつまずいた経験がたくさん集まっているので、読み物としても面白く、役立つものにもなっていると思います。

 

弁護士法人サリュ 業務改善部会「ワンアップ実務解説!交通事故事件処理の道標 実務をはじめからていねいに」(日本加除出版、2020)

ワンアップ実務解説!交通事故事件処理の道標 | 日本加除出版

最近出た本ですが、実際の手続きの流れを詳しく解説している本で、非常に良い本だと感じました。

実際やってみると、こういう資料が必要ということは分かっても、その資料って実際どういうものなのかイメージがつきにくかったり、その資料をどうやって取り付けるかがなかなか分からなかったりします。この本は、各種資料を図で載せていたり、取り付け方について解説していたりしていて、イメージをつけやすくする工夫がされています。

 

 

3.離婚

・秋武憲一「離婚調停(第3版)」(日本加除出版、2018)

離婚調停(第3版) | 至誠堂書店オンラインショップ

手続きについて非常に分かりやすく書かれた本です。調停委員に向けたアドバイスが多く書かれていますが、弁護士が読んでも参考になることが多いです。

 

・松本哲泓「〔改訂版〕婚姻費用・養育費の算定-裁判官の視点にみる算定の実務-」(新日本法規、2020)

〔改訂版〕婚姻費用・養育費の算定-裁判官の視点にみる算定の実務-|商品を探す | 新日本法規WEBサイト

・松本哲泓「離婚に伴う財産分与-裁判官の視点にみる分与の実務-」(新日本法規、2019)

離婚に伴う財産分与-裁判官の視点にみる分与の実務-|商品を探す | 新日本法規WEBサイト

婚姻費用・養育費、財産分与は離婚事件で問題になりやすいところですが、「あれこれってどうなるんだろ?」となることが非常に多いです。そしてそれがなかなか難しいです。この本は、問題となる論点について詳しく解説しています。

私は上記の論点でつまずいた時は、まずこの本を開いています。

 

司法研修所編「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」(法曹会、2019)

養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究 | 至誠堂書店オンラインショップ

標準算定方式・算定表の歴史や具体的な計算方法が割とわかりやすく書かれています。計算が必要になった時には参照することがあります。

 

 

4.債務整理・破産等

債務整理実務研究会編「事例に学ぶ債務整理入門─事件対応の思考と実務─」(民事法研究会、2014)

事例に学ぶ債務整理入門─事件対応の思考と実務─ | 法律書、実務書、書式なら民事法研究会

事例に学ぶシリーズはよく新人弁護士におすすめされる本だと思いますが、その中でも債務整理入門はOJT感があって良い本だと思います。

 

また、破産については、裁判所提出書類の書式を見てみるのが意外と良いのではないかと思っています。

 

 

5.労働

・君和田伸仁「労働法実務 労働者側の実践知」(有斐閣、2019)

労働法実務 労働者側の実践知〔LAWYERS' KNOWLEDGE〕 | 有斐閣

労働関係の実務書は下記の実務マニュアル一択かなと思っていましたが、この本も負けず劣らず素晴らしい本だと思います。論点ごとの解説はもちろん、実践的なアドバイスも多く記載されており、大変参考になります。

なお、使用者側の実践知も発売されています。

 

東京弁護士会労働法制特別委員会編「新労働事件実務マニュアル 第5版」(ぎょうせい、2020)

新労働事件実務マニュアル 第5版 東京弁護士会労働法制特別委員会/編著|地方自治、法令・判例のぎょうせいオンライン

今年に入ってまた改訂されました。分厚さからも分かるとおり、情報量はかなり多いです。一冊持っていると安心できます。

 

 

 

参考になりそうな本はまだまだありますが、あまり情報量が多くなってもよくないと思うので、このくらいにしておきます。

 

来年は、もっといろんな本を読んで、ブログの更新もできるようにしたいなと思っています。また投稿したらお読みいただければうれしいです。

 

1.岡本茂樹『反省させると犯罪者になります』

衝撃的なタイトルです。一般的な感覚としては、悪いことをしたときに、きちんと反省を促すことで、悪いことを繰り返さないようになると思いがちですが、本書はそのような考え方に警鐘を鳴らしています。

 

反省させると犯罪者になります (新潮新書)

反省させると犯罪者になります (新潮新書)

 

 

筆者は中高教員、教育センターでのカウンセラー、大学教員を経て、刑務所のスーパーバイザー、篤志面接委員として活動していました。

本書は、それぞれの立場で経験したことをもとに、受刑者を更生させるためにどうすべきかという点を論じています。

 

 【特徴1:豊富な経験に基づく考察】

筆者はもともと受刑者の更生に関わっていたわけではなく、もともとは教員やカウンセラーとして生徒指導や学生相談を行っていました。

その後、筆者は受刑者更生に関わることになりましたが、上記の指導や相談の経験をもとに、「反省させない」支援のあり方を確立させていきました。

本書では、筆者の経験が余すことなく語られています。実際に現場で受刑者と関わり合いながら支援のあり方を模索してきた筆者の経験は、とても具体的で非常に参考になります。

 

詳しくは実際に本を読んでいただきたいのですが、1点だけ注意しておくと、筆者は受刑者の反省が全く不要であると主張しているわけではありません(この点、タイトルを読んだだけで誤解がないようにしなければなりません)。受刑者が事件を起こした原点を見つめ、自分の内面と向き合うことがまずは必要で、その段階に至る前にただ形式的に反省を求めることは、形式的な反省にとどまってしまい、更生につながらないというのが筆者の主張です。

 

被疑者や被告人の段階では、事件を起こした(当然、まだ無罪が推定されている段階ではありますが)ばかりであることが多く、その段階で量刑事情として反省を求めることの危うさを実感しました。

 

【特徴2:被害者心理と更生支援とを分けて考えている】

筆者のメインの主張からは少し離れるのですが、この点も本書の特徴であると感じました。

被害者が加害者を絶対に許せないと感じることも当然であり、その点を重視すれば加害者に反省を促すことは当然のやり方であるようにも考えられます。しかし、加害者が真に更生することを考えれば、ひたすら反省を促すということは逆効果になりかねません。この点については筆者も自覚的であり、

“ずるいと思われるかもしれませんが、支援者の立場と被害者の立場をいっしょにして論じることは不可能です。”

としています(214頁)。

 

社会全体としてみれば、受刑者が再び罪を犯さないことは利益であり、そのためにはどうすればよいかという観点から更生を考えることが重要だと思います。しかし、被害者の立場からは、どうしても受け入れられない部分が出てきてしまうと思います。被害者の気持ちは受け止めなければなりませんが、更生を考える上では被害者の気持ちは一旦切り離して考えなくてはならないと思います(筆者の考えからも、最終的には受刑者に反省を求めるので、あくまでも「一旦」切り離すということが大事なのだと思います)。

 

【終わりに】

受刑者の更生を考える上でぜひ読んでおきたい本です。また、今は厳罰化が叫ばれる時代ですが、それが望ましいことなのかを考える際の貴重な資料でもあると思います。新書で手軽に読むことができるので、ぜひ読んでみてください。

ブログの目的や方針など

皆さんこんにちは。まつ4と申します。

最近、法律関係の様々な本を買っているのですが、

忙しさやだらだらしてしまうこともあり、なかなか読むことができていません。

 

そこで、読んだ本の書評を書いていくことで、

本を読むモチベーションにつなげたいと思い、ブログを始めました。

ブログを書くのは初めてで、読みにくい部分も多いと思いますが、

何卒よろしくお願いします。

 

ブログを書くにあたって、目的や基本的な方針、注意点を最初に書いておきたいと思います。

 

【ブログの目的】

ブログを始めたのは、買った本をきちんと読めるようにするためなのですが、

それぞれの本は著者の方が心を込めて書かれていると思いますので、

書評を読んで、実際に本を手に取ってみたくなるブログにできたら

いいなと考えています。

 

【ブログを書いている人について】

私は、2019年3月時点で、

司法試験には合格していますが、法曹としての実務経験はありません。

実務にどう役に立つかという観点からは適切な書評ができない可能性が高いです。

その点はあらかじめご了承ください。

 

【書評の方針】

最初に書いたブログの目的と、私自身辛口な言い方があまり好きではないという理由から、

ブログは基本的に甘口なものにしたいと考えています。

本について、いいところや面白いところを紹介できればと思います。

 

また、ブログの目的から考えて、また、著作権を侵害してしまう可能性も無くはないので、

書評を見ただけで内容が分かるようなものにするつもりはありません。

どんな本なのかという説明はするつもりですが、

最終的には読者の方に実際に読んでもらえるような記事を目指します。

 

【更新頻度について】

更新頻度は遅めになります。

本を読んで書評を書くというブログの性質上、仕方ないものと思っていただければと思います。

できるだけ飽きずに続けられるよう頑張りたいとは思います。

 

【コメントなどについて】

ブログの目的から考えて、コメントなどの反応は歓迎します。

実際に読んでみたという感想や、この本を読んでみて欲しいという要望がありましたら

コメントに書いていただければ嬉しいです。

また、誤字、脱字、誤読などの指摘も歓迎します。

コメント欄が荒れてしまう可能性もありますが、その際は別途対応を検討します。

 

 

以上になります。次回から書評を書き始めたいと思います。

つたない文章ですが、温かい目で見守っていただければ幸いです。